中小企業における新規事業の課題と成功率を高めるためのポイント

中小企業が新規事業で成功率を高めるためのポイントと、必要なリソースを確保する方法について解説します。中小企業は新規事業に必要な経営資源が不足しているという課題があり、課題解決に向けた対応が求められます。ポイントを押さえて新規事業を成功に導きましょう。

社会や市場の変化が激しい現代において、イノベーションの一環として新規事業を試みようとする中小企業は多いのではないでしょうか。しかし、限られたリソースの中で中小企業が既存事業と並行して新規事業を展開し、成功させるのは決して容易ではありません。

では、中小企業が新規事業に参入して成功するには、どのように取り組んでいけば良いのでしょうか。

本記事では、中小企業が新規事業の成功率を高めるためのポイントと必要なリソースを確保する方法を解説します。新規事業の立ち上げを検討している中小企業は、自社の課題解決と新規事業の計画策定にぜひお役立てください。

中小企業における新規事業の重要性と課題

テクノロジーの進歩やグローバル化による国際競争の激化などにより、市場の環境は激しく変化しています。既存の製品・サービスのライフサイクルは短縮化しており、今は既存事業が安定している中小企業であっても、その状態が数年後も持続するとは限りません。

そのため、中小企業が持続的に成長していくには、市場変化に対応できる新規事業の取り組みが重要といえるでしょう。新規事業が軌道に乗れば、複数の収益源が確保できます。景気や世界情勢の変化によって一つの事業が大きなダメージを受けても、もう一つの事業でカバーすることが可能になるのです。リスクを分散することで、会社の経営を安定させることができます。

長期的なリスクヘッジとして中小企業に新規事業が求められる一方で、中小企業における新規事業の成功率は約1割といわれており、失敗のリスクが高いことも否めません。

新規事業を成功させるには、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源の十分な確保が重要です。しかし、中小企業は大企業ほどリソースが潤沢ではないため、新規事業にリソースを割けないのが課題といえるでしょう。

中小企業が新規事業を成功させるには、リソース不足という課題を克服することが求められるのです。

中小企業が新規事業に必要なリソースを確保する方法

中小企業が限られたリソースで新規事業に取り組むのは、失敗のリスクを高めるおそれがあります。中小企業が新規事業を成功させるには、リソースの確保が重要といえるでしょう。

ここでは、中小企業が新規事業に必要なリソースを確保する方法について解説します。

外部リソースを活用する

人員不足で新規事業にリソースを割けない中小企業は多いでしょう。その場合は、外部リソースを活用するのがおすすめです。

短時間で専門家に相談できるスポットコンサルティングの活用、社内外の技術やノウハウを掛け合わせるオープンイノベーションの活用、企業・事業の買収・合併を行うM&Aの活用、新規事業の専門家との連携など、外部リソースの活用方法は多岐にわたります。

外部リソースを活用することで、自社にないノウハウや技術を流用できたり、専門的な立場からサポートしてもらえたりするので、効率良く新規事業を推進できるでしょう。

知見や経験のある人材を採用する

新規事業を成功させるには知見や経験のある人材をアサインすることが重要です。しかし、社内に新規事業のノウハウがある人材がいないケースも多いでしょう。その場合は、新規事業の知見や経験のある人材を採用するのがおすすめです。

ただ転職サイトに求人を掲載するだけでは求める人材が集まらない可能性もあるため、あらゆる採用手法を活用して、求職者との接点を増やすことが大切です。たとえば、求職者に直接アプローチを行うダイレクトリクルーティング、SNSを利用するソーシャルリクルーティング、求める人材への広告配信を行うリスティング求人広告、自社の社員に人材を紹介してもらうリファラル採用などが挙げられます。

新規事業の経験者を採用すれば、自社で新規事業に取り組む際にOJTを受けられるメリットがあります。社内のメンバーもノウハウを得られるため、人材育成にもつながるでしょう。

ただし、新規事業の経験者を採用する際は、新規事業のどの過程に関わったのかを採用前に確認する必要があります。過程によって得られるノウハウは異なるので、ミスマッチを防ぐためにも自社が求めるノウハウを持っている人材かどうかをしっかり見極めることが重要です。

補助金・助成金を活用する

新規事業にはまとまった費用が必要となるため、十分な資金を確保しなければなりません。しかし、資金不足に悩む中小企業も多いでしょう。その場合は、補助金・助成金を活用するのがおすすめです。

中小企業や小規模事業者の支援を目的として国や地方自治体が実施している制度で、返済不要なのが特徴です。補助金や助成金には、以下のようなものがあります。

  • ものづくり補助金
  • 革新的なサービス開発や試作品開発などの設備投資を支援する制度。

  • 小規模事業者持続化補助金
  • 販路開拓の取り組みや業務効率化の取り組みを支援する制度。

  • 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)
  • 新規事業の立ち上げの際に、新たな分野で必要となる知識や技術を習得させるための職業訓練などの訓練経費や訓練期間中の一部を助成する制度。

制度によって支給条件や金額は異なるので、補助金や助成金を活用する場合は支給条件を確認することが大切です。

創業融資を受ける

資金調達の方法として、創業融資制度を活用するのもおすすめです。創業融資には、日本政策金融公庫の新創業融資制度と、自治体による制度融資の2種類があります。

新創業融資制度は、創業・スタートアップを支援する制度です。要件を満たせば、無担保・無保証人で最大3,000万円の融資を受けることができます。短期間で融資を受けられるため、スピード感を持って新規事業を始めたい場合に活用できるでしょう。

制度融資は、自治体や金融機関、信用保証協会が連携して融資を行う制度です。金利の低さや長期間の借入れが可能などのメリットがあるのが特徴です。自治体ごとに融資条件が異なるため、自身の自治体の融資条件を必ず確認しておきましょう。

ただし、創業融資は会社自体が創業初期である必要があり、単に事業を新規で立ち上げる場合に活用できるわけではないので注意しましょう。創業初期でない場合は、日本政策金融公庫の新事業活動促進資金や多角化に関する自治体の制度融資があるため、そちらを活用するのがおすすめです。

中小企業が新規事業の成功率を高めるためのポイント

新規事業では十分なリソースを確保する以外にも、気を付けるべきポイントがたくさんあります。ここでは、中小企業が新規事業の成功率を高めるために押さえておくべきポイントを解説します。

自社の強みを把握する

新規事業を成功させるには、自社の強みの把握が重要です。自社分析は新規事業を始めるための第一歩であり、競合他社に対して自社に優位性があるかどうかを知ることは新規事業の成否を判断するポイントといえます。

自社の強みを把握するには、社内で議論して自社の強みを洗い出す、顧客や取引先にヒアリングやアンケート調査を行う、販売データや口コミなどの評価を確認するといった方法が挙げられるでしょう。主観的な視点だけでなく、客観的な視点から自社を分析することが大切です。

自社のノウハウや強みを活かせる事業に参入する

新規事業の参入パターンには、大きく分けて既存事業を活かすパターンと、新規市場で新製品・サービスを展開するパターンの2パターンがあります。中小企業はリソースが限られているため、まったくの新規市場でゼロから事業を展開するのではなく、自社のノウハウや強みを活かせる事業に参入するほうが成功率が上がるでしょう。

すでに持っているノウハウや資源を活かせれば、競合優位性を保ちやすくなります。ただし、収益性のある市場でないと意味がないので、市場調査や競合調査をしっかり行い、市場や顧客のニーズを的確に把握することが重要です。

小規模なテストマーケティングを実施する

中小企業は限られたリソースの中で新規事業に取り組まなければならず、すべてのリソースを投入していきなり市場に参入するのはリスクが高いです。そのため、小規模なテストマーケティングを実施して、市場や顧客の反応を見ながら徐々にリソースを投入し、製品・サービスの修正・改善を繰り返していくと良いでしょう。

小規模なテストマーケティングを実施することで、リソースを効率的に活用しながら新規事業を推進できます。市場や顧客のニーズにマッチしているかを検証できるため、早期の段階で収益性の有無を把握しやすくなります。

撤退ラインを決めておく

新規事業を開始する前に、撤退ラインを決めておきましょう。

どんなに実績のある企業であっても新規事業は成功する保証がなく、状況に応じて撤退の判断を下さなければならない場合もあります。しかし、撤退ラインが決まっていないと判断が遅れ、大きな損失を招いてしまい企業の経営を圧迫する事態になりかねません。

損失を最小限に抑えるためにも、「いつまでに○○を達成できていなければ撤退する」というように、具体的な期間や数値を定めて撤退ラインを決めることが大切です。

まとめ

ビジネス環境が激しく変化する現代において中小企業が生き残るためには、新規事業に取り組むことが非常に重要です。しかし、中小企業は新規事業に必要なリソースが不足しやすいという課題があり、新規事業を成功させるのは決して容易ではありません。

新規事業を成功させるためには、十分なリソースの確保と自社分析や市場調査などの念入りな準備が必要です。今回ご紹介したポイントを参考に、自社の課題を克服したうえで新規事業を成功へと導きましょう。

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