新規事業開発に必要なスキルと流れ、成功させるための6つのプロセス

新規事業開発に必要なスキルや成功させるためのプロセス、活用できるフレームワークについて解説します。新規事業開発を成功させるためには、念入りな準備と十分なリソースが必要です。ポイントを理解して、自社の強みを活かせる新規事業開発に取り組みましょう。

社会や市場は常に変化し続けており、環境の変化に対応するとともに生存戦略の一つとして、新しい事業を展開する企業は非常に多いです。 しかし、新規事業開発は決して簡単なものではないため、新規事業を展開してみたものの失敗に終わってしまったという例は少なくありません。

新規事業を成功に導くためのプロセスを理解して推進することが大切ですが、新規事業に関するノウハウがなく、どのように取り組めば良いか分からないという企業も多いでしょう。

本記事では、新規事業開発に必要なスキルと成功に導くための6つのプロセスについて解説します。 ポイントを押さえて、企業活動の拡大にお役立てください。

新規事業開発とは

新規事業開発とは、新しいビジネスをゼロベースで始めることです。社会や市場における目まぐるしいニーズの変化の中で、企業が持続的に成長するためには、新たな事業の展開は必要不可欠といえます。

しかし、社会のニーズに新しい価値を提供することは、決して容易ではありません。新規事業を開発するには、どんなに実績がある企業でも念入りな準備と多大な労力が必要となります。

また、社会や市場の動きを見極めながら最良のタイミングで市場に参入しなければならないため、計画から運営までのスピード感も求められます。

新規事業開発の成功には、アイデアが欠かせません。自社の知見や能力を一切活用しない市場への参入はリスクも大きいため、既存事業で培ったノウハウを活かして新しいビジネスに取り組むと良いでしょう。

新規事業開発を成功させるための流れ|6ステップの手順

新規事業開発を進めるには、流れに沿ってしっかり計画を立てる必要があります。ここでは、新規事業開発を成功させるための6つのプロセスについて解説していきます。

Step1.目的やコンセプトを明確にする

はじめに、新規事業を始める目的やコンセプトを明確にしましょう。

目的や目標を明確にしたうえで新規事業開発を進めていけば、事業実現の可能性が高まり、成功率もアップするでしょう。

Step2.データ収集・分析を行う

新しいビジネスを展開するならば、市場や顧客のニーズと自社の置かれている状況を把握しておかなければなりません。市場の動きや顧客のニーズ、競合他社の情報、自社の強みと弱みなど、新規事業に関するさまざまなデータをできるだけ収集しましょう。

また、収集したデータから必要なデータを抜き出し、市場の将来性や収益性の有無、自社がその市場で競合他社に勝てる見込みがあるのかについて分析することも大切です。せっかく新規事業開発に取り組んでも、市場の需要や将来性がなかったり収益が見込めなかったりしては、ビジネスとして成功する確率は非常に低くなってしまいます。

効率的に新規事業を進めるためにも、この段階でしっかり有効なデータを収集・分析しておきましょう。

Step3.ターゲットを選定する

必要なデータが集まったら、分析結果をもとに新規事業のターゲットを明確にしていきます。ターゲットの明確化は、新規事業を成功させるうえで非常に重要なポイントです。

「30代の男性」のような曖昧なターゲット像では、展開する市場を絞れず、新規事業の方向性が定まりません。「30代で野球観戦が趣味の男性」「20代後半で管理職に就いたばかりの男性」のように、年齢、性別、職業、ライフスタイル、趣味などのプロフィールから具体的にターゲット像を設定しましょう。

ターゲットが明確になれば、ターゲットとなる顧客の悩みや課題が顕在化しやすくなります。ターゲットの悩みや課題を解決するために、自社としてどのような製品やサービスを提供できるのかを考えていきましょう。

Step4.新規事業のアイデアの創出

収集・分析したデータや選定したターゲット像から、新規事業のアイデアを創出していきます。アイデアの創出は、新規事業開発の成功に大きく関わるもっとも重要なプロセスといえるでしょう。

自社の既存事業や競合他社と同じようなアイデアでは、独創性がなくなってしまうため、市場において新しい価値を生み出せるようなアイデアを創出することが大切です。とはいえ、自社に知見や能力がないアイデアや、自社の強みやノウハウを活かせないアイデアは、実現の可能性が低く失敗のリスクを高めてしまいます。

そのため、自社の強みやノウハウを活かしつつ、独創的な新規事業のアイデアを創出しましょう。

また、アイデアを生み出す際はチームメンバーでアイデアを出し合い、アイデアを膨らませていくことが重要なポイントです。まずは精度にこだわらず、できるだけ多くのアイデアを出していくようにしましょう。

Step5.ビジネスプランを決定する

たくさんアイデアが創出できたら、その中から有望なものを選定していきます。選定したアイデアをもとに、フレームワークを用いて、具体的なビジネスプランを立てていきましょう。フレームワークについては本記事で後述しています。

フレームワークを活用すると、現段階の計画における修正点や問題点が見つかりやすくなります。修正点や問題点が見つかった場合は、該当箇所の修正をするとともに計画を練り直し、再度フレームワークを活用してビジネスモデルの検証を行うことが重要です。

新規事業開発はスピード感が求められますから、改善を繰り返しながら柔軟に軌道修正していくPDCAサイクル(Plan、Do、Check、Action)を高速で回していきましょう。

また、ビジネスプランが決定したら、あわせて損益計算書や事業計画書の作成、資金計画の策定など、必要な準備を進めていきます。事業計画書を作成する際は、Spep1で設定した目標について、「いつまでに、どの程度の成果を達成するのか」というように定量的かつ具体的に設定したものを入れ込むようにしましょう。

Step6.社内体制を構築して実行する

ビジネスプランが完成したら、責任者やメンバーの決定などを行います。新規事業を運営するための社内体制は、ポジションごとに適任となる人材を配置することが重要です。

責任者は幹部クラスの役員で、知識やノウハウ、決断力、判断力といった多方面のスキルを持っている人が適任でしょう。事業を軌道に乗せるには、ビジネス開始後も試行錯誤を繰り返すため、PDCAサイクルを回せるメンバーを選ぶ必要があります。

また、新規事業の成功には、チームの意識共有や連携が欠かせません。そのため、メンバーがそれぞれ自分の役割を認識したうえで、連携を取りやすい体制を構築していきましょう。

新規事業開発を効率的に進める方法

新規事業を成功させるには、市場や顧客のニーズの変化に対応するためのスピード感が欠かせません。ここでは、新規事業開発において先ほどご紹介した6つのプロセスを効率的に進める方法をご紹介します。

リーンスタートアップ

リーンスタートアップとは、新規事業を小規模・短期間で始め、市場や顧客の反応を分析しながら事業の成功の可能性や改善点があるかを早期に判断して、軌道修正を繰り返す手法のことです。

リーンスタートアップの特徴は、小規模・短期間で新規事業を始められるので、コストや時間を最小限に抑えながら、市場や顧客のニーズに合った製品・サービスを開発できる点です。

トライアンドエラーを繰り返して新規事業の精度を高めていけるため、せっかく時間をかけて手がけた新規事業が市場・顧客のニーズに合わず、結果的にコストや時間だけが無駄になってしまった…というリスクを回避しやすくなるでしょう。

新規事業にあまりコストを割けない場合や、スピード感を持って顧客のレビューを知りたい場合にも有効な手法といえます。

オープンイノベーション

オープンイノベーションとは、他社や研究機関などの外部リソースを活用して、社内外の垣根を越えて新規事業開発のノウハウや技術を取り入れる手法です。

社内の技術やリソースが不足している場合、既存事業であれば新たな人材の確保や社内の人材育成で不足を補えます。しかし、新規事業はスピード感が求められるので、即戦力となるリソースの確保が必要となります。

そのため、新規事業開発において社内のノウハウや技術、リソースが不足している場合は、オープンイノベーションを活用すると効果を期待できるでしょう。オープンイノベーションの取り組みとして、産学共同研究や技術の公募提案などが挙げられます。外部リソースを活用すれば、新たな知識やノウハウを習得できるので、社内の人材育成にもつながりやすくなります。

ただし、外部リソースを活用する際は、社内外で連携をしっかり取れるように管理することが大切です。

新規事業開発で活用できるフレームワーク

新規事業を成功させるには、市場や自社の状況など必要なデータを十分にリサーチして、フレームワークを使って具体的なビジネスプランを立てることが重要です。ここでは、新規事業開発で活用できるフレームワークをご紹介します。

SWOT分析

SWOT分析とは、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの要因から自社の内部環境と外部環境を分析する手法です。

「強み」と「弱み」は、自社の従業員数や技術力など内部環境要因の評価軸となります。一方、「機会」と「脅威」は、市場のニーズや経済の状況など自社では変化させることができない外部環境要因の評価軸となるのです。

内部環境と外部環境をそれぞれプラス要因とマイナス要因に分けることで、自社の現状を把握できるようになります。外部環境に対してどのような事業を展開していくか、製品やサービスを提供していくかといった新規事業開発のヒントになるでしょう。

PEST分析

PEST分析とは、「政治(Political)」「経済(Economical)」「社会・ライフスタイル(Social・Cultural)」「技術(Technological)」の4つの項目において、マクロ環境を分析する手法です。

世の中全体のトレンドや変化を分析できるため、市場・顧客のニーズや世界情勢に対応しやすくなります。また、将来的な脅威やリスクといった外部要因の予測・分析もできるので、自社が持続的に経営を続けていくために何をすべきかの把握につながるでしょう。

3C分析

3C分析とは、「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つの側面からマーケティング環境を分析する手法です。

市場・顧客のニーズは常に変化し続けています。市場・顧客や競合他社などの外部環境と自社の内部環境を把握・分析して、いつどのタイミングで市場に参入していくかが非常に重要なポイントです。

市場・顧客のニーズの変化や競合他社の動向に対して、自社が活かせる強みとカバーすべき弱みを把握することで、競争力の高い新規事業のプラン創出に役立つでしょう。

アンゾフのマトリクス分析

アンゾフのマトリクス分析とは、縦軸を「市場」、横軸を「製品・サービス」として、それぞれ「新規」と「既存」に分けて4象限から分析する手法です。

また、既存事業を活かしながら新規事業開発を行うのか、まったく新しい市場で事業を展開するのかなど、事業の方向性の見極めにも有効です。新規事業の展開方法を検討する際や既存事業の見直しを行う際にも活用できるでしょう。

5Forces(ファイブ・フォース)

5Forcesとは、自社の脅威を「業界内の競合の脅威」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」の5つの要因から分析して、収益性の向上につなげる手法です。

自社にとって何が脅威となるかを把握でき、自社の強みと弱みを見つけやすくなります。脅威に対してどのように対応していくか、改善すべき点があるかを理解できるので、自社に必要な施策の実行に役立つでしょう。

また、業界構造を把握できるようになり、新規参入すべきか事業撤退すべきかを判断しやすくなります。新規参入をする場合、自社が競合他社に対抗できる強みは何なのか、収益性の確保はできるか、事業撤退をする際はどれほどコストがかかるかなど、今後の経営の判断材料となる情報を把握しやすくなるでしょう。

新規事業開発で求められるスキル

新規事業開発では、市場や顧客のニーズに合ったアイデアの創出やPDCAサイクルの実行など、さまざまなプロセスを踏む必要があり、あらゆるスキルが求められます。最後に、新規事業開発で求められるスキルについて解説します。

課題設定力

課題設定力とは、現状と理想のギャップとなる課題を発見する能力のことです。課題設定力があれば、理想へのギャップを埋めるために今何をすべきかを瞬時に判断できるようになります。

スピード感が重視される新規事業開発において、時間やリソースに限りのある中で適切なアクションを実行しなければなりません。そのため、課題を的確に設定できれば課題解決に向けて必要なアクションが実行でき、速やかに新規事業の開発に取り組めるでしょう。

仮説立案力

仮説立案力とは、あらゆる情報から仮説を立てる能力のことです。収集したデータから顧客の課題や悩みを推測して仮説を立てれば、顧客のニーズに合った製品・サービスが提案できるようになります。

仮説を立てるためには、必要な情報を効率良く収集しなければなりません。そのため、情報収集力も併せて求められるスキルです。

マーケティングスキル

マーケティングスキルとは、自社の製品・サービスが売れる仕組みを作るために調査、企画、ターゲティングといった業務を推進する総合的な能力のことです。マーケティングスキルがあれば、市場の変化や顧客のニーズを正確に把握して対応するために、自社として何をすべきか施策を立てやすくなります。

新規事業を開発するうえで、競合他社や市場などの調査、ターゲットの設定といったプロセスは欠かせません。そのため、新規事業開発でもっとも重要なスキルといえるでしょう。

コミュニケーションスキル

新規事業開発は一人では成立し得ず、チームメンバーや関連部署、外部リソースなど多くの人との連携が大切になります。利害関係の調整、交渉も必要になるため、コミュニケーションスキルが欠かせません。

相手に自分の考えを伝えることやチーム内で意識共有を行うことも、新規事業を成功させるうえで非常に重要です。こまめにコミュニケーションを取ることで、情報連携が速やかに行えるようになり、顧客とのコミュニケーションの中で見出したニーズや課題が新規事業開発につながる可能性もあるでしょう。

まとめ

新規事業開発はゼロから始めるビジネスなので、データ収集や市場・顧客のニーズの把握、アイデア創出といったプロセスが成功率を高めるカギとなります。また、効率的に進めるために、フレームワークや新規事業開発に必要なスキルを活用していくことも大切です。

必要な技術やノウハウが自社にない場合、外部リソースの活用も有効でしょう。新規事業開発に取り組む際には、自社の内部環境をしっかり把握したうえで外部環境に対してどのように対応していくかが重要となります。

これから新規事業開発に取り組もうとお考えであれば、ぜひ今回ご紹介したプロセスを参考にしてください。

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