現代は物価高騰や消費者ニーズの多角化などが原因で商品・サービスが簡単に売れなくなっています。自社商品・サービスを売る仕組みを作るために、マーケティングの基本的な流れを抑えるのは必要不可欠です。
結論からいうと、マーケティングの基本的な流れは、マーケティングプロセスを理解すればいいでしょう。市場調査や施策を立案して実行していく一連の流れを押さえることが可能です。
本記事では、マーケティングプロセスの6つのステップのポイントを詳しく解説していきます。また、成功事例やマーケティング活動に役立つフレームワークも紹介しているので、ぜひ参考にして下さい。
マーケティングプロセスとは?

マーケティングプロセスとは、マーケティング施策の基本的な流れのことです。
マーケティング対象の市場調査を行い、ターゲットを絞り込み、自社の強みを理解して、具体的な広報と販売方法を選定して、実行と改善を行います。この一連の流れが、マーケティングプロセスです。
具体的な6つのステップ項目は以下の通りです。
- 市場分析
- セグメンテーション
- ターゲティング
- ポジショニング
- マーケティングミックス
- 実行と評価
それでは、各ステップごとに詳しくみていきましょう。
STEP1・市場分析
マーケティングプロセスの最初のステップは「市場分析」です。まずは、企業が属する市場・業界の内外環境を調査・分析を行います。そして、競合他社と比べて自社の強み・弱みを見つけ出すことで自社の立ち位置が確認できます。
また、顧客のニーズや好みも調査して分析するといいでしょう。市場調査を行うことで「自社の強み」「顧客は何を求めているか」などが分析できるので、今後のマーケティング施策の土台作りになります。
市場分析を効率的に行うために、フレームワークを活用するといいでしょう。市場分析に役立つフレームワークは、以下の3つです。
- SWOT分析
- PEST分析
- 3C分析
SWOT分析
SWOT分析とは「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの項目で、自社の内部環境と外部環境のプラス・マイナス要因を分析するフレームワークです。
内部環境は、自社商品・サービスの強みやメリットなどのプラス要素と、弱み・デメリットなどのマイナス要素を分析します。外部環境は、社会や市場の変化に伴って自社商品が他社よりも有利になるプラス要素と、悪影響を及ぼすと懸念されるマイナス要素を分析します。
SWOT分析を行えば、自社や競合他社の現状や、業界や市場の将来性を分析して把握できるので、マーケティング施策の計画を立てるときに大いに役立つでしょう。
PEST分析
PEST分析とは「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の4つの外部環境の要因が、自社にどのような影響を与える可能性があるか分析するフレームワークです。
たとえば、ChatGPTや自動運転などの新たな技術が、自社の運営や戦略に大きな影響を与えるかもしれません。また失業率や物価上昇などの経済的要因や、コロナ・緊急事態宣言などの社会的要因で消費者の意識や趣向に少なからず変化が出ます。
PEST分析を通して自社を取り囲む外部環境の変化を把握することで、今必要な対応策やマーケティング戦略を練り直すことができます。しかし、あくまでも外部環境のデータ分析なので、自社の内部環境を分析するフレームワークと同時に行うのがいいでしょう。
3C分析
3C分析とは「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの項目で、自社のマーケティング戦略や事業計画を決めるときに有効なフレームワークです。
市場規模やターゲット層、競合他社や自社の強みを分析していくことで、事業の方向性が定まり、マーケティング戦略の成功ポイントを見つけ出すことができるでしょう。また、3C分析はポイントが3つに絞り込まれているので、どのフレームワークを行うか迷っている企業の方にも手が付けやすいためおすすめです。
STEP2・セグメンテーション
マーケティングプロセスの第2のステップは「セグメンテーション」です。セグメンテーションとは「区分」という意味です。自社商品の市場にいる顧客のニーズや特性など様々な切り口で分類していき細分化をしていきます。
市場や顧客を細分化していくことで「自社ビジネスを行うのに適した場所はどこか」「顧客が求めるニーズや行動パターンなどは何か?」など、マーケティング施策を行う市場の絞り込みに有効です。
また、市場や顧客を分類するときに代表的な変数が4つあるので押さえておきましょう。
- 地理的変数
- 人口動態変数
- 心理的変数
- 行動変数
「地理的変数」は、国・地域・都市などの地理的な要因で行い、「人口動態変数」は、年齢・性別・家族構成などの人口統計学的な要因で細分化を行います。
「心理的変数」は、ライフスタイル・価値観・動機などの消費者心理に基づいて行い、「行動変数」は、購買頻度・利用目的・購買額などの購買行動に基づいて細分化を行いましょう。
STEP3・ターゲティング
マーケティングプロセスの第3のステップは「ターゲティング」です。セグメンテーションで細分化した顧客のニーズや特性を踏まえて、自社商品・サービスをどの市場に集中的に投下するか決定するのがターゲティングの役割です。
つまり、ターゲティングでより重要になるのは自社商品を「誰に届けるのか?」をより詳細に決めていくフェーズです。具体的には「年齢(年代)・性別・職業・住居地・年収・価値観・悩み・趣味・生活スタイル」などを細かく決めていくことで、マーケティング施策の方向性も具体的かつ分かりやすくなります。
ターゲティングを通して、自社商品・サービスに興味関心が高い顧客にアピールできれば、購入率アップ・リピート率の向上にも繋がるでしょう。
STEP4・ポジショニング
マーケティングプロセスの第4のステップは「ポジショニング」です。ポジショニングとは、競合他社との差別化を図り、自社商品をターゲットに認識・選択してもらうための立ち位置を決めることをいいます。
ポジショニングで重要なのは、競合他社と比べて自社商品の優位性・オリジナリティや選ばれる理由を明確にすることです。そこで、競合他社と自社商品の違いや特徴を整理するために「ポジショニングマップ」を活用しましょう。
「ポジショニングマップ」は、競合他社と自社商品で比較したい項目を縦軸と横軸で評価します。たとえば、縦軸は価格帯・横軸は機能性とするならば、競合他社と重ならない空白の立ち位置を狙うようにするのがポイントです。ポジショニングで顧客にとって唯一無二の存在になれるような立ち位置を見つけましょう。
STEP5・マーケティングミックス
マーケティングプロセスの第5のステップは「マーケティングミックス」です。マーケティングミックスとは、自社商品を顧客にアプローチするためにフレームワークやツールを活用して戦略を立案していくことです。
マーケティングミックスで代表的なフレームワークである「4P分析」を活用すれば、複数のマーケティング要素を組み合わせて戦略の立案が可能です。また最近では顧客視点に立った分析方法である「4C分析」も主流となっています。
市場の分析を行い、顧客のニーズを把握して適切なマーケティング施策が打てるようにマーケティングミックスに取り組みましょう。ではマーケティングミックスで代表的な2つのフレームワークの詳細を解説します。
- 4P分析
- 4C分析
4P分析
4P分析とは「Product (製品・商品)」「Price (価格)」「Place (流通・配布)」「Promotion (販促・宣伝)」の4つの企業視点の項目で、自社商品・サービスのマーケティング施策を立案するフレームワークです。
4P分析では、どのような商品をどれくらいの価格でどのような販売経路でどのように宣伝していくか考えていくフレームワークのため、各々の関連性が取れていないと成り立ちません。たとえば、高齢者向けの商品を販売したいのに、ECサイト限定で販売したり、SNSのみでPRしたりしても有効とはいえないでしょう。
関連性が非常に重要なフレームワークのため「他の要素と密接に関係しているのか」「商品・サービスのコンセプトは適切か」などを意識して進めていきましょう。
4C分析
4C分析とは「Customer Value(顧客価値)」「Cost(顧客にとっての経費)」「Convenience(入手の容易性)」「Communication(コミュニケーション)」の4つの顧客視点の項目で、自社商品・サービスのマーケティング施策を立案するフレームワークです。
4C分析では、顧客がどのような価値を求めるのかや、価格と品質のバランスが良い適正価格なのかなどの顧客目線で考えることが重要です。また、SNSを活用して定期的な情報配信をして、コメント・DMなどで反応をみてマーケティング施策に反映させてもいいでしょう。
4C分析も4P分析同様に、各項目との関連性が非常に重要なフレームワークです。いくら商品価値が高くても、顧客が手に届かないような値段設定では意味がありません。各項目の整合性が取れるように意識しましょう。
STEP6・実行と評価
マーケティングプロセスの最後のステップは「実行と評価」です。ここまでのマーケティングプロセスで立案した施策を実行して評価していきます。思うような成果が出せていないのであれば、各プロセス内の課題や問題点を抽出して、改善策を考えていきましょう。
また、マーケティングプロセスの実行と評価を行うときに有効なのがKPIです。KPIとは重要業績評価指標といい、目標達成までのプロセスの達成状況を観測するための定量的な指標のことです。
KPIを設定していると、マーケティング施策の最終目標が明確になり具体的なアクションをどれくらい行えばいいのかが明確になります。そのため、自社内で業務内容を正確に共有できるため、認識のズレなく円滑なコミュニケーションをとりながら施策に打ち込めるでしょう。
マーケティングプロセスの成功事例

参考になるマーケティングプロセスの成功事例を紹介します。それぞれの企業がマーケティングプロセスを実行していく中で重要視した内容を元に、ご自身のマーケティング戦略に役立ててください。
SchoolDude
世界各国の6,000以上の教育機関向けに管理機能ソリューションを提供しているSchoolDude社は、マーケティングプロセスの中でセグメンテーションを重視して成功した企業です。
SchoolDude社は、自社ビジネスを行うのに適した場所を高等教育業界に絞り込みました。高等教育業界は、キャンパス規模や設備数などが各々異なり、学校法人ごとに多種多様なニーズを持っています。SchoolDude社は、教育に特化した専門知識と、教育機関ごとのニーズに合わせてカスタマイズできる商品力を活かしてターゲティングを行いました。
さらに、教育機関のタイプ・設備規模数・地域などで30個のグループに細かくセグメンテーションを行いました。そして、新規顧客の獲得・見込み客の育成などに役立つマーケティング施策をサポートするMAツールなどを活用して、ターゲットの特性に合うコンテンツをWebサイト上で表示させたり、ウェビナーやユーザーカンファレンスの登録を促していきました。
ターゲットごとのニーズに対応していった結果、世界各国でSchoolDude社の高等教育向けのコンテンツが導入されるまでに拡大していきました。
花王
花王株式会社が販売している「ヘルシア緑茶」は、マーケティングプロセスの中でポジショニングを重視して成功した商品です。ヘルシア緑茶が販売開始した当初は、競合他社の緑茶は若者をターゲットにした商品でした。
しかし、花王のヘルシア緑茶は「肥満に悩む中年男性サラリーマン」をターゲットにして競合他社と差別化を図りました。また、販売ルートも多忙なサラリーマンが購入しやすいように当時では珍しいコンビニ限定販売にして更に差別化を図ったのです。
また、花王のヘルシア緑茶は「体脂肪を燃焼させる緑茶」というコンセプトで、競合他社より高い価格設定にも関わらず唯一無二のポジショニングの獲得に成功したといえるでしょう。
まとめ
物価高や少子高齢化、SNSの普及やコロナのようなパンデミックなど、さまざまな要因でビジネス市場は日々激しく変化しています。これまで以上に、商品・サービスを自社ターゲットの元へ届ける仕組みを作るために、マーケティングプロセスは非常に重要です。
欲しいものをすぐ入手できるようになった現代では、競合他社と同じようなマーケティング施策では顧客の元へ自社商品・サービスを届けるのは難しくなっています。
本記事で紹介した、マーケティングプロセスを成功させるポイントやフレームワークを活用して、競合他社に負けないマーケティング活動を行いましょう。